コードギアス反逆のルルーシュ第23話「せめて哀しみとともに」のあらすじと感想を書いていきたいと思います!
第22話 血染めのユフィのあらすじ
ルルーシュのギアスは暴走した。ギアスにオンオフか効かなくなり、そのせいでユーフェミアは「日本人を殺せ」という命令に従う殺戮の魔女と化してしまった。悲劇が日本人を、そして罪の意識がルルーシュを襲う。しかしそんなことを知るのは、ルルーシュ本人に限られよう。もはや別人となったユーフェミアを、ルルーシュはその手で葬ることを決める。それは誰のためであったのか。黒の騎士団のためでも、日本人のためでも、もちろん最愛の妹であるナナリーのためでもなかった。ルルーシュ本人が、もう見ていられなかったのだろう。己の超常の力により豹変してしまった、初恋の相手を。誰より心優しかった、ユーフェミアを。そして、ユーフェミア救出のためにランスロットで式典会場に飛び込んできたスザクはそこで目にしてしまう。スザクの光が、ゼロによって奪われるのを…。
第23話せめて哀しみとともにの感想
前回のラストに引き続き、地獄です。
裏切られたと思う日本人。怒れる黒の騎士団。哀しみつつ、嘆き、泣きじゃくりそうな己を必死に押さえ込み、それの指揮をとるルルーシュ。そして、自らナイトメアに騎乗し、守りたいと願った日本人をひたすら肉塊とするために撃ち続けるユーフェミア。
コードギアスのという物語の、大きな基点となった回ということに間違いはないでしょう。この回の、この惨劇があったからこそ黒の騎士団とゼロは蜂起し、ブリタニアの支配や虐殺皇女ユーフェミアに激怒した民衆をも味方にし、トウキョウ租界へ攻め込むことになるのですから。
そもそもナイトメア乗りでは無いユーフェミアがナイトメアに騎乗しているのは、その方が日本人を殺せると判断し、ブリタニア軍兵士に声をかけナイトメアを譲ってもらったからです。平時であれば、いくらユーフェミアといえど、ユーフェミアだからこそ、ナイトメアに騎乗することを許すブリタニア兵では無かったでしょう。皇女殿下自らが戦うことなど、姉のコーネリアが特殊なだけで、あってはなりません。
しかし、ユーフェミアは姉の腹心であり、幼い頃から自分に使えた軍人、アンドレアス・ダールトンまでその手で撃ち、日本人虐殺を命じています。その並々ならぬ状態のユーフェミアに逆らえる武人など、存在しないのでしょう。
ナイトメアをカレンとゼロに早々に破壊され出てきたユーフェミアは、それでもなおマシンガンを手にして日本人を殺そうとします。彼女の美しいドレスは、返り血で真っ赤になっています。彼女が守りたいと思った日本人の血で。なんという悲劇。この悲劇を巻き起こしたルルーシュを、ルルーシュ本人の意思とは関係ないと分かっていても、一生許せそうにありません。
そしてルルーシュは、そんな彼女を哀しげに見つめる眼差しを仮面の下に押し込めるようにして、彼女の面前に立ちます。ユーフェミアは無論、ゼロの正体がルルーシュであることを知っているのですから、銃撃の手を止めます。彼女にかかっている命令は、「日本人を殺せ」ですからね。あまりにもユーフェミアの思想とかけ離れたその命令によるものの為なのか、支離滅裂な言葉を口にするユーフェミア。
そしてそんな彼女を前にして、仮面の下のルルーシュは尚も傷付きます。もう彼には耐え切ることが出来なかったのでしょう。
ユーフェミアは最初、ギアスに抵抗する様子さえ見せました。もちろんそれが彼女にとって、あり得ないことだったということもあるのでしょうが、見ようによっては、抵抗し切ることがもし可能だったら、ユーフェミアはギアスを克服出来るかもしれない可能性さえ秘めていると言っても過言ではありませんでした。無論、起きてしまった悲劇は変わらないため、それを知った時のユーフェミアの苦しみも、相当なものであったでしょうが…。
そしてルルーシュは、運命の引き金を引きます。それが己の手からだったのは、どうしてだったのでしょうか。ユーフェミアに対するせめてもの情なのか、はたまた逃げなのか、ルルーシュとして向き合った結果なのか。その辺の解釈は人によりけりな部分かもしれませんが、あくまで私は、ルルーシュがルルーシュであるためには、必要なことだったのかもしれないとも思います。自分が引き起こしてしまった悲劇を、まるで初めからこうする予定だったと語る為に、必要な戒めだったのではないかと…。そしてそう思い込まないと、ルルーシュ自身でさえ壊れてしまいそうな悲劇になったことは、間違いありません。
そしてちょうどその瞬間を、ゼロがユーフェミアに銃を撃つその時を、彼女の騎士たる枢木スザクは見てしまいました。スザクの光であり、希望。生きる目的などなかったスザクの、初めて出来た生きる理由。生涯をかけて、守り抜こうと思った相手。その彼女が、ゼロというテロリストの凶弾に堕ちるのを。
ここでのスザクの鬼気迫るランスロットでの突撃。紅蓮をもってしても勝ちまかす気迫は、相当なものです。無論、ここでは背負っているものの大きさが違うでしょう。カレンでさえ日本人の怒りや哀しみを背負っているつもりでも、それは広い範囲でのことであって、ユーフェミア個人のことしか頭にないスザク、それ以外の他者など考える余裕のないスザクの気迫に、勝てるものなどこの段階ではどこにもいないでしょう。
大急ぎで、渾身の力を振り絞ってスザクはユーフェミアを抱えて走りました。それは間違いなく、ユーフェミアの一命を取り留める為に。彼の光を、無くさない為に。
しかしそんな思いに反して、ユーフェミアの四肢からは色が失われていき、ゼロに撃たれた箇所からの出血は止まることはありません。軍人のスザクには、それさえ分かっていたのかもしれません。彼女の傷が致命傷であること、おそらくもう助からないということも。しかし、それで諦められるほど、当然ユーフェミアの存在は軽々しいものではありません。
普段飄々としているロイドさん、そしてセシルさんでさえ息を呑むユーフェミアの状態に、スザクは懸命に叫びます。「ユフィを助けてください!」と。
無論、どんな惨劇を起こしたとあっても、副総督にして第3皇女のユーフェミアです。その時出来うる限りの処置は施されたことでしょう。実際たくさんの輸血チューブに繋がれ、呼吸器も付け、どうにか生かそうと周りの人間は動いたに違いないのです。ただ、ゼロは、致命傷となる場所を、完璧に撃ち抜いた。ユーフェミアを殺そうという、完全なる意思を持って。それで生きながらえる人間などいないのです。ただそれだけの事実が、スザクの、現場にいた全員の背中に、のしかかっていたことでしょう。
ユーフェミアは死への境界を彷徨いながらも、目の前の日本人、己の騎士である枢木スザクにさえも殺意を感じます。必死にそれを押しとどめ、行政特区日本はどうなったかとスザクの訪ねます。
ギアスは、その人の精神に、魂に命令を下す力です。
その人の魂が弱っている状態ならば、もはや効力を発揮しないということでしょう。それほどまでにユーフェミアは衰弱し、限界を迎えていました。
それでもなお、行政特区日本を気にかけ、日本人は喜んでくれたかと聞く彼女は、先ほどまでルルーシュの命令の下に虐殺を繰り返していた彼女とはまさに別人。もちろんこちらが本来の彼女の姿ではありますが、人々の記憶には、「虐殺皇女ユーフェミア」として残ることになるのでした。
そうして、スザクの、多くの人々の希望の光となるはずだった少女は、永遠にそのまぶたを閉じたのです。多くの犠牲と、憎しみを一身に受け。博愛の天使だった彼女は、殺戮の魔女として、人々の記憶に刻まれるのでした。なんという悲劇。なんという鬼畜シナリオ。私はこの展開に、どれほどの涙を流したことでしょう。この件に関していえば、ルルーシュをどうしても許せません。それは今でも。
可能なら、今からでも蘇って欲しいです。スザクも、コーネリアも、どれほどの絶望だったでしょう。ましてや最後に起こしたユーフェミアらしからぬ行動が、ギアスという悪魔の力によるものだったと知った時、彼らはどれほどの恨みをゼロに向かわせたでしょう。
連絡を受けたユーフェミアの姉、コーネリアは愕然とします。
それもそのはず。ルルーシュにとって何よりも大切なものが実妹であるナナリーであるように、コーネリアもユーフェミアのことを何よりも変え難く愛していました。
もちろん帝国主義のコーネリアと、イレヴンを差別しない博愛主義のユーフェミアは対立することも多かったようですが、そんなことは所詮2人の絆の前では小事。真に理解して欲しい相手だからこそぶつかり、愛しているからこそ憤り、それでもいつかお互いに分かり合えると信じていたからこそ、最近は距離を置いていたようです。そこでここにきて、ユーフェミアの訃報。
軍略、知略に関していえばゼロさえ苦戦を強いられるコーネリアが、ユーフェミアの仇である憤怒に駆られるのは当然のことでした。
そしてコーネリアのすごいところは、ユーフェミアのしたことに対して、全く疑いのないことでしょう。スザクでさえ、行政特区での惨劇に対して「なぜ、あんなことを…」と確認せざるを得なかったことを、コーネリアは疑うことすらしませんでした。我が実妹ユーフェミアが、そんなことをしようはずもない、あれは全て仮面の男ゼロの策略であると、自分の中で答えも導いたのです。そんな所にも姉妹の絆を感じずにはいられませんし、やはりこの場面でも、ユーフェミアの命を奪ったルルーシュが、憎くもなります。
そして黒の騎士団は、この前代未聞の大虐殺により怒れる日本人、民衆を味方につけ、政庁のあるトウキョウ租界に攻め込みます。他の各地でも暴動が起きているため、エリア11内の武装勢力を政庁だけに集めるわけにはいかない、そうなると手薄になるだろう政庁を攻め落とすという作戦です。
攻めてくる黒の騎士団対策に荒れる政庁。総督であるコーネリアは、ユーフェミアの自室にこもって出てこない。気高い彼女の心が、今までに無いほど動揺し、哀しんでいることを表現しているようで、総督でも皇女でもなく、ただただ妹を愛していた姉であるコーネリアの途方もない哀しみが、見ている者の胸を打ちます。決して主人公たるルルーシュ側だけに同情できないだけの事情が、こうして一つ増えていくのもコードギアスの面白みであるのは、間違いないでしょう。
一生を賭して守り抜こうと思った主を失ったスザク。自分にとっての光を失ったスザクは、ユーフェミアの携帯を使って、ルルーシュに電話をかけてきます。ここまで来たら、確信する何かがあったのかもしれません。元々スザクの父親殺しを知っている人物数少ない人物として、ルルーシュのことを疑ったこともあったスザクです。
「空を見ないで欲しい…」と学校のみんなに伝えてくれとスザクはルルーシュに頼みました。それはゼロに対する憎しみに支配された自分が、ただ殺戮を行う兵器になると、自分で理解していたから。そんなことはいけないと、父親殺しの一件から仕舞い込んでいた自身の鋭い刃を、再び己の為に振るうと決意したスザク。希望の光だったユーフェミアの命を奪ったゼロ。そして彼女の尊い思考を、理想を捻じ曲げ、悲劇を巻き起こさせたゼロ。ユーフェミアの一件は、ゼロに対する明確な憎しみを、初めて孕んだ瞬間だったでしょう。
ギアスの紋様が瞳に浮きっぱなしになったルルーシュが、不敵に微笑みます。憎しみを明確に込めて自分に向かってくるスザクを確認してもはや楽しげに、そして一方では哀しげに。次回、総攻撃を仕掛けた黒の騎士団は、ブリタニア軍に対して勝利を収めることが出来るのでしょうか?そして、スザクとルルーシュは、どうなっていくのでしょうか。
次回、コードギアス反逆のルルーシュ
「崩落のステージ」に続きます!